プラスチックの穴空きソリで
夕方の土手を下った
好きな食べ物は鶏の唐揚げで
アホみたいに食べた
帰りが遅くなって帰っても
お母さんは怒らなかった
意味もないイライラの八つ当たりも
おばあちゃんは怒らなかった
なんとなく大事にしてたクマのぬいぐるみが
呆気なくあの日ゴミ袋に入れられて
なんて言ったらいいのか今もわかんないまま
血は出ない
運ばれて潰されて燃やされてもあの子は
声も出ない
食べられてお腹が膨れていくのを
ただただ見てるだけだった
ため息や不機嫌の理由を
白痴のフリして目をそらし
包丁を取り出したお母さんの
ご希望に沿えるように泣いた
ずっと残したかったモノや思い出が
永遠なんて嘘っぱちに気化して
夢枕の中でふかふかな腕が首を絞めるんだ
血は出ない
脅しの刃物じゃなければよかった 死ねばよかった
Lie and I
後悔じゃ歯が立たないくらいに今が足りない
急勾配を下るようさボロボロのソリで
手綱を握る力もないままで
大切にしたかったけれど
大切にする器もないまま
助けられた動物たちが温度のない目でこっちを見る
彼らに噛みつかれたって
血が出るわけじゃないけど
こめかみと左脳の天頂部が痛いんだよ
今すぐ止めてくれこの内出血を
血は出ない
だから誰が気づいてくれるわけじゃない
声が出ない
じゃあどうすんだこのままで
助かる見込みをまた見捨てるわけか
血は出ない
でも嫌だもう苦しいんだ助けてくれよナニカ
血が出ない
痛い痛いが飛んでかない
血液に乗って逃げる場所も無いから
もう捨ててもいい心を救いたいんだ
なんとなくをもう失いたくないが
なんとなくなんにもやる気になんねーよ
アイツが死ぬのもお前の勝手
アイツが死ぬのも俺の勝手
