夢の中の冒険



AM7:40


信じたくないくらい吐き気
仕方なく家を出る

コンビニで暇を潰して





気づいたら
夜になっていて
雨が降る
ラジオが鳴る

いつか聞いたような声と
聞き飽きたミュージックライナーが告げられる

知らない特番
知らない音楽

雷が光って






AM9:51


頭が重い
液体になった鉛が重力に従っているようで
また憂鬱になった





気づいたら
ここは安っぽいロビーのラブホテル
ネオンは1つ切れていて
80'sの壁紙が待ち伏せている

狭い薄暗い通路を
25歳の女と歩く
長い髪から時々大好きなシャンプーの香りがする

205と書かれた扉の前に立ち止まり
扉を開けると緑色の廊下
大理石のような床

女はブーツを
俺はスニーカーを脱ぎ捨てて
手を引かれながら自分の意思で
丁字の突き当たりを左に跳ね除けた

ビジネスホテルような室温の部屋
女が向かったのはバスルームだった






AM10:32


全く理由もわからないくらいに憂鬱
何もしたくない
動きたくない
悲しい

チョコチップスナックパンを食べた






気づいたら
かつての同級生とカーテンの閉めきった教室
遠くになんとなく避けていた女子がいる
遠くになんとなく嫌いじゃなかった女子がいる

机の向かいにいる男子は
あの日の後悔を今も抱えているのか
それともまだ封じられた左手を持っているのか
顔は誰だったかわからないけどなんとなく話してた

昼間なのに厭に暗い
カーテンの遮光よりも更に暗い

夏服の白がチラチラと目につく
煩いくらいのカメラワーク

廊下にいると生徒の自在が散らかっている
窓際にもたれ掛かっている男子二人は
ニヤけた顔でなんか不快だった

掃除道具入れが動いた気がした







AM11:21


今日は何をするんだっけ
なにを何をしなきゃいけないだっけ
でもきっとまた運ばれるんだろう
一人分の用意された枠の中に入るんだろう
もう何も考えたくない






気づいたら
草木だ
土手
風が吹く


ここじゃない、違う


城、夜





AM12:26


嫌だ





気づいたら
リビングルームでバスルームの音を聞いていた
外装からはわからないくらい綺麗で快適だった

「除きに来るの?」

くすねた声で女は尋ねる

「それなら入りに行くよ」

震えた心で俺は返す

「ふふっ、いいよー」

待ちかねた女の声が返る

服を剥いで扉を開く
少し背の低い裸体の女は
広々としたバスルームでシャワーを浴びて
見えない膜に覆われているかのような顔面で
こちらに振り返った

誤魔化し笑う女と賎しくニヤける俺

バスルームに足を踏み入れると
ぎこちない両腕で女の体を抱きしめた

デブより柔い肌
滑るような背中
その感触を少しずつ確かめようとする

萎縮したイチモツ
38度から打ち付けるシャワー

顔は見えないけど君が笑っているのがわかって
俺は安心して少し笑った






AM12:59


あー・・・






気づいたら
塗炭に打ち付ける雨音を聞いていて
気づいたら
狭苦しいトラックの中にいた

深緑のテントに阻まれ
僅かに見えるワイパーの踊るフロントガラス

加齢臭もしないオヤジが何かの手入れをしている

気づいたら
新幹線の座席が並んでいる
発車のベルが鳴り
キャリーバッグは華麗なスピンを決めて
立っていた人が次々に座り始める


窓の外はどこだろう
見覚えがある
たぶん知っている街だ

新幹線はいつまで経っても動かなかった






PM1:31


願う
もう一度続きを


 



気づいたら
男女トイレの前
廊下
エメラルドグリーンの階段と踊り場
鉄の手すり


違う!






PM2:19


もう無理だ
仮に寝れても見れないだろう

何もやる気がない
頭も痛い
体が重い

また願った

また見せてくれ
楽しい夢が見たい



もう観ること見ることはできなかった
諦めた

やらなきゃいけないこと
これから迫ること

また考えた





おはよう
こんにちは

さようなら
今日の夢