私は夢の中で、延々と続く地球儀を歩いていることがある。空は黒く、距離さえ測れないほどの闇だ。だけど地の色は見える。手も見えるし足も見える。何処から灯されているかわからない。つまり空がただただ黒いだけなのだ。稀に星が見えることもあるが、きっかけがわからない。所詮夢と言ってしまえばそれまでだ。
 夢から醒めればそこにはうんざりする朝が来る。携帯のアラームがやかましく、窓から射す朝日すら憎い。目眩と吐き気は朝刊のように毎日届くし、妙に全身に感じる重さは金縛りのようだ。遭ったことないけど。アラームを止めて次に聞こえてくるのは、何百人という億劫を乗せた電車の走る音。考えたら雷の音に似ているな。だから嫌いなのかもしれない。
 出すつもりで昨晩まとめたゴミ袋を横切って、顔を洗う、歯を磨く、寝間着を着替える。携帯を鞄にしまって家を出る。扉に鍵をかけて、階段を下りて、オートロックの解除の音を聞いて外に出る。そしてゴミ袋を持ってくるのを忘れたことに気付く。

 そして私は夢を見る。
 今日も延々と続く地球儀の、黒の空を眺めて過ごす。私に用意されているのは立派な椅子。立場に用意された大層な椅子に横柄に座るのが私。
 退屈はしていない。何も変わらないようで、何かが変わっている漆黒と地平線を眺め続ける。広がる湖や小屋や木をなんとなく眺めているのが日課
 ここは小さな地球儀で、ただ存在するだけの夢。
 あなたの中の私。私達の中の私。