バス曜日




またどこに行くかもわからないバスに乗る
識別するための名前が付いているだけの
初めて行く場所の知らないバス停に着く

結局疲弊するだけの旅
行き先も門限もない無神経な一人旅

いつもは右に曲がる道路を
バスは左に曲がって
決められた所で停まって
定刻まで時間調整をする
僕はイヤホンをつけて感傷的な音楽を聴いて
曇った夕景をチラ見
歩道のサインポールと目が合う
次の停車先がアナウンスされる
その地域の特徴的な名前がつけられたバス停を知らされた

緑色の定期入れの縁を指でなぞれば
こじつけられた不釣り合い優遇に
傷ついた時代の被害者の完成だ

次のバス停に近づいて誰かがボタンを押す
目的地を持たない僕は何かとか考える


知らない駅
知らない街
知らない噴水に知らない地域のシンボル
茫然と視界に飛び込んでくる
弱々しい斜陽に照らされた凝固土と
クリーム色の空
なんでこんなものに泣かされるんだか
全然わからない


厚底ブーツで紅い髪にふんわりしたワンピース着た
ケバい女は地味な住宅街で降りてったな
いつもは目立たない顔で生きてんのかい
都心からの終着点は森林公園の隣の喫茶店の前だ
特に見るものもないじゃないか散歩道
時間調整したのになんで遅れてるんだい
ゴミが散乱した公衆トイレを使って
食い荒らしたような空の写メを撮って

定刻に動き出した戻りのバスに乗り込む
やはり疲弊しただけの旅
同じ座席に座って戻っていく
なにも得られなかった旅
久しぶりに訳のわかる汗かいて
路を追っただけのブログを書いて
自分の時間を掻いて
いつも通りの「楽しかった」で締めくくります
藍に染める夜が会いに来てくれて終わりを知り得るよ
いつも通りの「良かったです」でよかったです
僕が生み出した「めんどくさい」に
よう勝ったようでよかったです







という一曲お聴きください
カンザキイオリさんで あの夏が飽和する。



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