わたしの"家族"


唯一好きな家族
暴力的な兄ではなく
無神経な弟ではなく
無頓着な妹ではなく
同族嫌悪の両親ではなく
厚顔無恥な母方の祖母ではない




父方の祖母が入院したらしい



父方の祖母について詳しいエピソードがあるわけではない
彼女は戦中からずっと家事をし続け
誰から疎まれようと皮肉られようとも
堪えては自分のささやかな楽しみを噛み締めていた

そしてわたし達のことを理解していないながらも
唯一味方でいてくれた存在だった

当時のわたしは素直になれなかったのか
それとも本当に煩わしいと感じていたのか
それは明確じゃないが
今感じられるのは多くの好意だけで
いなくなると感じると素直に悲しい


祖母が昔飼っていた子犬を
わたしは可愛がっていた
祖母は故郷の東京に定期的に行っていたのだが
その都度わたしに言っていた
「○○(犬の名前)をよろしくね」
わたしが何か特別なことをするわけじゃないのに

子犬が白内障になり
耳が遠くなったときには
触り方を教えてくれて一緒に可愛がってほしいと言っていた


わたしは気恥ずかしくて
まともに顔も見ないで
感謝も伝えないで
たまに会ったら祖母の好物の餡子の入った製菓を渡すくらいだった


息子以外に近しい繋がりのある人物は既におらず
寂しい思いをしていたのだろうか

きっと誰よりもストレスを感じていただろう
力もなく
完璧さもなく
権限もない
母親にいびられ
母方の祖母には憎まれ
それでも黙って家事を続けていた


病院のにおいは嫌いだが
もし行けるなら行きたい