怪物


24時を指す時計の針を音が
鼓膜に揺さぶりをかける
睡魔が耳を塞いで怯える頃に
奴はやってくる

軋む階段を上り
屋根裏の戸を叩き
蝶番の窓口に噛み付く

その姿 Monster
ヤツを見つけたらすぐに気づかれる
眼の隙間から頭の中に入り込まれるさ
起死起死と笑ってる
眠れずに月に映された影が
三日月形の刃になって
ぶら下がる、肩が凝る


立ちくらみで視界が暗転
誰もいない場所で膝をついて
突然笑いが込み上げてくる
薬を盛られたか

いつも通りの六畳一間
気にならない音が気になり
今宵もノイズが聞こえ出す

日を跨げば Warning
頼もしい誘い文句で添い寝するかのように
怖いのは生きることだ、と5本の両腕で
ギシギシと絞める
朝日はヤツを逃がしていく
それでも網膜には
脳裏には影が残ってる


毎晩に巣食う怪物が
静脈に刺した媚薬で
明けない夜を愛してく
夜しか愛せなくなっていく


その姿 Monster
視線に気づいて首を回して
お前の心を頂くよ、と両端から食器を構える
左手のコンパスを支えにして
右手のカッターナイフで切り裂く
御馳走様の代わりに
憐憫を差し向けて消えた

それでも網膜には
心臓には右脳には
影が残っている
夜しか愛せなくなっていく