電機街の恋



人は何度も恋をするものだ
対象がなんであれ
飽いたと思えばまた揺さぶられる

裏切られて痛い目見たと思えば別の誰かに一目惚れしたり
百年続くはずだった恋が冷めたはずが来週からまた百年の始まりになるかもしれない
別れを告げたその時に翻った髪の毛が舞う姿に長年囚われ続けたり
偶然会ったかつての恋人の変わらぬ面影に落とされることもあるのだろう

記憶の端に引っ掛かる
最後に見せた恋人の恋らしさが
今まで付き合っていたどんな瞬間よりも
恋人だった

それがわたしの襟袖に引っ掛かる
フックが食い込んでいる
それに抵抗しないでいる
やられっぱなしでいる


仮にわたしに愛は消え去って
だけど微かに見つけた恋の痕跡が
恋情だとしても
そうだとしても
もう結ばれることは無い
そうしたいとは思わない

これは数多の眠りの中の夢で
わたしは林の中で
シェルターに囚われて寝ているだけ
王子様の口付けで
女神様のキスで
目が覚めたら
夢を見られなくなる
もう夢には戻れない

安物の売り捌かれてる唇の体温なら
夢から覚めないで済むけれど
きっと体は放置されたまま
林は段々成長して
森の中に紛れていって
樹海の落し物になるのでしょう


時折瞼を開いて
凝り固まった体をほぐす様に
感情を整えるけれど
二度寝ばかりして
また夢の中の誰かに会いに行こうとするの

会いたいわけじゃない
でも会いに行こうとするの
この気持ちはなんなの?

夢通りの四丁目
道すがら電飾の明かりに
瞳を奪われては見て回っていく
気に入ったものがあれば指で触ってみるけど
買いはしないで
そしたら別の誰かがお買い上げる
別にいいけどさ、って少し不貞腐れてまた
夢の中の幻を探す浮気者


こんなのは恋じゃない
わかってるよ
執着心は粘着質で
なかなか落ちないから
諦めて誰かが発明してくれるのを待ってる
出血と痛みのない瘡蓋の剥がし方
もう一回恋させてくれる運命
待ってる


でもまだ痛いの
百年も続くわけないし
変えた髪型は最悪に無様
思い出せる記憶なんか全然無い

最後に見せた恋人の恋らしさに
やり直したくなんかないのに
今まで見てきたどんな仕草よりも
恋人だった
から
また恋を探してる
また情を遺してる




コレサワ

いたいいたい


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