「大丈夫」



優しかった彼の残した手紙には
優しかった彼の言葉が敷き詰められていて
宛先のないそれは
まるで自分に書いていたみたいだった


いったい何人が彼の声を聞いただろう
いったい何人が彼に気付いただろう
跡形もなく消えた後には知る由もない
本心も行先も安らいでいた場所も
雲になったの
幸せになったの
その場所でどんな顔をしてるの
いったい何人が心の声を聞いただろう
いったい何人が気付こうとしただろう


痛みを知れば人は優しくなれるかもしれないが
その人が優しくされるかはわからない
優しくなれても独り善がりかもしれない
彼はきっと哀しい人


わたしは
わたしは加害者なのかもしれない
わたしは
わたしたちは