Raincoat



雨音が眼鏡のレンズに指紋を残す


ベランダを走り回って時を遡る


台無しにされる




薫風を大きな口で飲み込んだ

舌を垂らした


初夏の寝苦しさを少しだけ盗んだ





昔から考えていることがある

ウェザーニューズは予防線を張る


傘を持たせれば万事の為だ

降られても照られても恨まれはしない




雨曇りの暗闇

踊り場の窓辺

一人きりの静寂に雨音だけが聞こえていた

今でもその景色が声をかけてくる

変わらない顔でわたしを落ち着かせてくれる



屋根があってよかった

窓があってよかった

瞳があってよかった

鼓膜があってよかった



夏が来る







雨粒がわたしの体を触れた


その感触は嫌いにはなれなかった