ペデストリアンデッキ




「今年も終わるよな」
35km/hで走るイルミネーションを見ながら
隣で君が呟く
「早いよね」
目新しいことあったかな?なんて耽って
僕がそう返す

君のお気に入りの曲の口笛が
乾燥した風の五線譜に乗って
僕の中で煮え立つコーヒーの
缶と手すりがユニゾンしてる

数字にすればなんだチープなカウンター
年の終わりにはまた一つ死ぬ時を教わるさ僕は
メリークリスマスの詩が
どこからともなく聞こえてくるよ
それでもここからの電飾を
来週も並んで眺めるよ
乾杯の音頭を130円の『あっか~い』で


歳を一丁前に食ってはみたけど
そんな僕らが
生意気にクリスマスを祝うならなんだ

ツリー買って私欲の短冊でも掛けるか
七面鳥の肉を削いでカレーに煮込むか
ケーキのロウソクは低温ロウソク
…不謹慎にするにも不完全燃焼か

数奇な運命に導かれて、
ここでこうやって巡り会えたんだ。
戦場のメリークリスマスは言う
そういう大層な人生じゃない
星も見えない看板の下
ラクションと君でぼんやりする
夜を消費してるのが僕らの人生


これでいいのかほんと
端金で浪費して一年が終わって
去年もこうしてたよな
互いに伴侶ができてもなぁ
来年もこうしてたっていいよな


「雪は積もるかな」
10km/hで渋滞しだした光を見ながら
隣で君が呟く
「どうだろな」
君はなに考えてんだろ?なんて思って
僕がそう返す

「来年もこんな感じなんかな」
鬼が笑いそうなことを君が呟く
「来年は七面鳥でも食うか」
って僕らも一緒に笑う聖夜