昼寝で見た夢




英語みたいな言葉を喋る僕
地下鉄が近くに走る音が聞こえる

倉庫のような所
真っ暗でドアのガラスから漏れる微かな光だけが頼り
物が散らかってる
なにが散らかってるかはわからない

右手にはダガーナイフが握られてた


とりあえず部屋から出ることにして
ドアに向かいノブを捻って開く

先程の部屋よりも、多く外からの光が射し込んできているため物が見える
金属製のラックが左に2台、右に1台
そこには挽き肉のような赤黒い何かが
全ての段を埋め尽くしていた

僕はもちろん触る気にはならなかった
でもなぜか怖くはなかった
今ここにある肉の怖さより
暗い場所で目が覚めた怖さの方が勝っていただけかもしれない


光を多く飲み込んでいる更に奥のドアを開く
同時に警笛が聞こえる
かなり近い
左側から聞こえたがそこに電車はない
だけど直感でここが地下で、地下鉄が通っているんだと悟る

かなり広い場所に出た
左には大きな空洞
それこそ地下鉄が通れそうな空間が空いてる

ドアを開けてすぐに見えるのは
6つの積まれたタイヤ
床に砕けたタイル
上への階段

相変わらず暗いままだが
先程までに比べれば遥かに見やすい
明かりの正体は切れなかったこの空間につけられた白熱灯だったが
ガラス窓から射し込んだ色は黄色だったはず
今僕が立っている辺りに1つ
左の空間の辺りに1つ
階段の近くに1つ
どれも古されたように光が弱々しい

3歩、4歩
タイヤに向かって歩いてみた
その時に先程の部屋から赤い色の足跡が続いているのがわかった
足跡と言っても人間らしくない
動物の足跡だとしたら異常に足が長い
60センチくらいはあるだろうか
それがタイヤの陰に続いていき
そこで止まっている
普通に考えれば足跡と思わないのかもしれないが
なぜかそれが足跡だと感じた


積まれているタイヤの隣で、ホイールをさすった
これも明らかに棄てられたものであると感じる年季の入り方

部屋が黒い煤が飛んでいるのかと思うくらいに暗い
においは取り壊す前の古いビルのようだ
湿って黴ってこびりついている


僕は息が詰まりそうになって
怖さよりも外の空気が吸いたくて
階段へと急いだ

階段の上の白熱灯の下から
階段の上を見上げた
暗かった
もう今より暗い所に行くのは嫌だったが
行くしかなかった




~REEL~



??
真っ暗だ。
どこだろう。


私の右手が無い。
赤色の挽き肉みたいなものに包まれてる。全身が。
眼球が赤い。なんで
怖い。

私の左腕に僕がいる。
金髪の僕がいる。
私がなにものかわからない。怖い。

「大丈夫、行くよ」
開けたドアの向こうにいる少年が私に呼びかける。
私と同じくらいの歳の、少年。

私はこの姿を見られることや、怖がられることより、
私自身が私を怖くて、動けなかった。動きたくなかった。

それでも少年は笑って私に呼びかけた。
「早く来ないなら置いてくよ?」

私はいつの間にか足を踏み出してた。
その部屋に立ち入った瞬間、私は気付いた。
ドアを隔てた隣の部屋には金属製の棚が3つあった。
何にも置いてない。
見たことある部屋?
さっきの部屋より外からの光が入ってて少し明るい。棚の後ろの壁が木製であることがわかった。
じゃあさっきの足跡は、私。


奥のドアを少年が開けて、少年は積まれたタイヤの陰にしゃがんだ。
「ほら、ここまで来て」

怖い。でも安心していた。少年は私をちゃんと見て、呼んでくれてる。
棚の部屋を通り、奥のドアの向こうは、やっぱり広い空間だった。
暗いことは暗いが、さっき見たときよりは明るく、白熱灯だけでなく蛍光灯もある。

私はよたよたとタイヤの脇に向かい、少年の横に座った。

「多分痛くはないと思うけど…」

そう言うと少年は、漫画で見るようなナイフを取り出し、私の右腕に当てた。
少し怖くて、強張っていたところに、少年は私の肩を抱いてくれた。それで安心して震えは止まった。

少年は力を入れて、私の右腕についている赤色の肉を削いでいく。
確かに痛くはないけど、私の体から落ちているのを見るとどうしても叫びそうになってしまう。
怖い。怖い。怖い。

「大丈夫、大丈夫だよ」
私が震える度に少年は肩を強く抱いて安心させてくれた。

二の腕までの私の腕についていた肉は削ぎ落とされて、私の本当の腕が出てきた。
軽い火傷の痕みたいに赤くはなっているけど、特別に痛いわけではない。

少年は出てきた腕にアルコールと思われる水をかけて包帯みたいなガーゼを巻いてくれた。

他の部分もやるのかな。眼球はどうするんだろう。僕はどうなるの。
そんなこと考えたけど任せることにした。安心できる。たぶん大丈夫。
そんなこと思って少年を見てると微笑んでくれて、私の顔は見えないかもしれないけど、私も嬉しくて、少し笑った。



~Where~



「誰だッ!」
広い空間の、広い空洞の向こう。向こうから男の人の大声が聞こえて、その人の持ってる懐中電灯が向けられた。
タイヤの陰にいた私達は光は当たってないけどきっと気付かれたんだ…


直後、轟音と共に、空洞に電車が走り抜けた。
電車の明かりが部屋全てを照らすくらいに明るくて、なんだか知らないけど、私は懐かしくなった。







電車のホーム。
左右に電車が走っている。
ホームにはオープンカフェが開設しており、お洒落なカウンター、丸テーブル、夜景を眺められるテーブル。
女は改札を通り、階段を下り、そのカフェへまっすぐ向かう。
20人はいるだろうか、通せんぼする人の群れをスイスイとかわして、ホームの先に近いテーブルで談笑する同級生に近づく。
日本語と英語が入り交じった中、宿題がどうとか、アイツの彼氏がどうとか、右耳から左耳へ通り過ぎてく。
同級生の待つテーブルに、女は仏頂面で腕を置いた。ニヤけた男と、不機嫌そうな女の視線を一斉に集めて、
女は口を開いた。