人混み。謂うに30人以上は居るだろうか。報道用のカメラを携えて、わざとらしいマイクを引っ提げて、人は何かに食い付いていた。
わたしは恐くなった。視られること、囲まれること、問い質されること…。
走ってその場から逃げ出した。
すると、報道陣は視線をこちらに向けて、一斉にわたしを追い掛け始めた。わたしはかつて使っていた通りに走って逃げた。
七分くらいの力なのに信じられない程の勢いがつき、川を走り幅跳びで越えた。自分でも怖いくらいの速さだったが、言葉に捕まるよりはマシだった。工場地帯を抜け、追う人々が見えなくなったくらいで、トンネルの中にぶち当たった。そこで止まって、初めて一緒に逃げていた人物の存在に気付く。
わたしは彼と一言二言交わし、怯えながらも一緒にトンネルを出た。先に見えたのは『たばこ』と書かれた看板と古ぼけた店、カーブミラーのある丁字路。
「~~!」
女性に話し掛けられた。思わず構えるわたしと彼。
逃げようとすると、女性は敵意が無いことを示す。歳上に見えるその女性は、わたしと彼を指差した店へと誘おうとする。
何故だかはわからないが、信用したわたし達は女性の後ろについていくことにした。
脚にまだ余力はあった。
工場地帯の、生活用水路の脇を歩いていた。
男性に案内されながら、わたしと、芸能人2人、4人で、細く小さいトンネルを何度も何度もくぐった。
5つ目のトンネルを抜けると、そこはあのカーブミラーの丁字路だった。
突然、わたしは走り出した。自分の力がどれだけあるのか試したかった。全力で走り出したが、すぐにトンネルの横の壁にぶつかった。微かに痛かった。
脚が重くなってきた。
そこは有名なテーマパーク。
イヤホンよりももっと近くで鳴り響く、有名なクリスマスソングを耳にしながら、話しやすそうな男性と歩いていた。
卒業旅行、はたまた成人式だろうか、学生のような風貌や着物姿の女子が至る所で燥ぎ回っている。
わたしは疲れながらも、楽しく振る舞っていた。楽しそうな景色を見ることは気持ちが良かった。
大きな城の前の広場に来た。相変わらず女子が賑やかにしている中、
「これはセンスがないね」
とわたしは言う。
BGMのように鳴り響く曲と風景にケチを付けた。
「こんな景色に、こんな曲は、まるで合わない。わたしなら~…」
とダメ出しと自慢を始めた。
息を切らしながら体を回し、そして楽しそうに階段を飛び跳ねていた。
城の中に入ると、外装とは裏腹、狭い部屋に通された。
装飾は煌びやかで、天井には広さに合わないシャンデリアまで吊るされていた。客人を招く椅子が14個程置かれ、ドレスやタキシードを纏った男女が座っていた。
わたしはどうすればよいのかわからず、人の目が気になった。おとなしくしていようと、椅子に力を抜きながら座ろうとした。
直後、全身に力が入らなくなり、座ろうとした体は椅子に凭れ掛かるように倒れてしまった。
周囲の人々は立ち上がり、わたしを一斉に見て、心配の声を上げる者、ただ口を塞ぐ者、近付こうとする者が囲んだ。
脚は限界だった。
見られていることに息苦しさを感じながら、わたしの意識は遠ざかっていった。
私はしがないサラリーマンである。何も成せないでいる。
社会人として失格で、夢を見ながらも追うことも諦めていた。
ゲームセンターで格闘ゲームをすることくらいしか生き甲斐が無い。
そんな私にも妻がいる。力強い女性だ。たまに仕事上での関係もある。
このドラマとアニメはまだ未知数である。
目が覚めた