Arsonist


半田鏝を布に当て狩り
焦げ焼き付いて捲り上がる黒煙の薫りを
燻る覆い被るような形を

指で摘まむ
空を裂く
突如地を失った足元みたいに
擦り落ちていく


軈て火種が手を挙げて
仲間に肩を組んで拡がっていく
少しずつ取り返しが着かなくなる

生は蝕まれる
安らぎは死ぬ
こんなにも綺麗なものはいつも刹那だ
金で出来た恒久の部屋なんかより
遥かに幸せだった


終わり際が連れてきた感情の出生
見当もつかないから受け入れるしかないが
漸く吹き出せた表情が
泣きながら、笑うことだと、
僕が云うなら、


忽ち火に囲まれて
正気を取り戻しそうな熱い床の上
僕はやっと包まれたように
突き刺す業光の中で
息も儘ならぬまま

幸せの柔らかさを、
喜びの優しさを、
冷たさの意味を、
暖かさの儚さを、

触れられない物の尊さを、
触れられない物の切なさを、

眼を焦がして知ったのだ。


影の中を渡る殺人鬼だって

光の中に居られること


やっと許された