ピノキオピー HUMAN の 話 ②





9 空想しょうもない日々
投稿された当初からとんでもないくらいの衝撃を受け、とんでもない吐き気に襲われた。名曲。こんな自分を抉ってくる曲、そしてこんな共感できる「なんにもない」歌詞があるのかと。もう初めのAメロから、学生の頃の心を離せなくなってしまった切なさが猛烈に迫ってくる。メロディもイントロから暗闇に飛ばされたかのような。
真っ暗の部屋で聴くと頭の中掻き混ぜられるような感覚に陥る。気持ちいい。

なんだかんだ、"あんた自身は何を考えている?"という問いになかなか答えられないもんだなぁとかも近頃思う。
特に2番の歌詞とかは非常に共感できる上に、ピノさん自身も生放送で話してた内容とリンクしていて、この壮大に何も起こらない曲に悔やみや苦悩が詰められているんだろうなって感じて、どことなく苦しくなってくる。

そして繰り返しになるが、これミクソロでよかったやろ。もうとやかくは書かないけども。でもキー違いが聴けるという意味では良かったとは思う。

投稿されている動画のMVも非常に良い。無表情な生物が規則的に動いているのは、思考の停止と同時に、感情の葛藤を描ける。また無彩色を多く使っているのは、疑問の不鮮明さを描ける。
それが、どうしてちゃんが血涙を流す瞬間に、留まっていた感情が一気に噴き出す感じ。最後に畳み掛けるピノ作品を映像で見せるとあんな感じなんだろね。
映像も含めて本当に堪らない名曲。


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PinocchioP - Crappy Fantasy Days feat.Hatsune Miku / ピノキオピー - 空想しょうもない日々 - YouTube








10 ウソラセラ
もうね、聴いた瞬間きたあああああああああああああああああ!!!でしたよ。これ!!ピノボーカルを活かし切っている!!という気持ちが溢れまくった。承認欲求の獣の叫びよ。
なんで今まで通りやってるだけなのに上手くいかないんだ。なんでみんなそんな風に自分を見るのか。誰か認めてくれって曲。泣きながら笑ってるように感じてしまう。
狼少年の話に沿ったものではあるし、かつてsasakure.UKさんが オオカミ少年独白 という曲を出していたのでなんとなくそれを思い出したが、最後まで承認欲求の獣のままだねこちらは。

いやこの曲の何が興奮するかって、言葉選びが素晴らしいことだね。
たとえば1番Bメロ
"ひとりむなしく狼煙を上げた"
歌詞だけ読むと本来「狼が来ること」を知らせるために狼煙を上げて知らせるという意味があるが、
「狼煙を上げる」という言葉自体に「~をやり始める」という意味もある。つまり、さぁ自分を見てくれ!という呼び掛けもしているんだよね。
更に曲の構成もこの後がサビで、この"狼煙を上げた"という歌詞が、今から盛り上がりだぞ!という予感をさせてくれる。最高の入り。もうこれだけでも充分なんだけどさ。

もうね、俺みたいな承認欲求の怪物がこういう曲を聴くと本当にじわじわ効いてくるんだよ。根拠のない自信を大事にしてるけど、それを探られるのがめちゃくちゃ怖くて。適当に今まで生きてこれたような、理由のない優しさが気持ちよくて、それが離せなくなってしまって。
ていうかね、小さい頃に賢いだのなんだの褒められ過ぎた人ってこんなのに陥りやすいんじゃないかと考えてしまう。つらたん。
こんなこと書いてる時に泣きそうになってしまうからほんとダメです。もう感想にも解説にもなってないけど、もう何も言えないくらい良い曲なんですよこれは。もう…

噂によるとピノさん自体はあまりに気に入っていないらしいが、関係ありません、わたしは大好きです。
この曲のためだけにチュウニズムをやったけど、難しいねあれ。なんかプレイヤーには結構好評な曲らしくて嬉しいですね。







11 すきなことだけでいいです
来たか問題作。いや違うんだよ。もう最初に言わせてくれ。正直この曲は最初好きじゃなかったし伸びるとも思ってなかったんだよ。それがまさかの大ヒットな。驚いたね。

この曲はヒトよりも人間に全面的に寄った曲だと思う。人間の「好き」をテーマに置いてるイメージ。
"全人類が幸せになったら 宇宙が迷惑するから"だったり"好きなことに囲まれて 嫌なことが許せなくなる"だったり、どことなくエゴイズムを感じる。このアルバム自体『漫画』と近いものを感じるという声をよく見るが、個人的にはこの曲がそれを感じさせてくれる。

えー……言っていいですか。メロディとかMVとか、他に諸々、正直もう話すことないです。この曲にあんまり思い入れもなくて、好きだけどまあそれだけっていうか。色々感じることはあるけどわざわざ書くことのものじゃないっていうか。あとよくわからないところとかもあるし。
"甘えんな でも甘味は好き"という言葉遊びは好きだし、"好きなことだけ見つめて だんだん視力が弱くなる 好きなことで満たされて だんだん頭が悪くなる""偏っていた君の趣味 悪化して思考停止"は感受性が弱まったり、思想が凝り固まったりってことでしょ。
でもそんなの説明することとか口に出すことでもないしね。
だから他人の考察とか色々聞いてみたいな。わたしの拙い頭じゃ大した感じ方はできなかったので。




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PinocchioP - All I Need are Things I Like / ピノキオピー - すきなことだけでいいです - YouTube







12 きみも悪い人でよかった
好みの展開ど真ん中を撃ち抜いていった。静かから盛り上がっていくこと、情景、センチメンタルからのピノキオピー色全開の人生賛歌。何回聴いても泣きそうになってしまう。
こんな言い方はほんと悪いんだけどさ。はみ出し者同士のなんでもない日常が美しかった、っていうような、なに?もう、なんなの?この感想書く間に聴いて何回泣きそうになったと思ってんの?

静かに始まって、段々盛り上がって、最後に壮大になって、静かに終わる。この流れの曲大体好きになっちゃうんだけど、加えて歌詞が美しい。この時期の夜に聴くと物凄く震える。
"くだらない感傷を抱えたまま 煤けた路地裏を歩き続けた
冷たい雨に打たれ 陽だまりを避けてたのに
きみの手のひらは温かかった"
この歌詞の一気に救われる感じわかりますか。くだらないって言われるのは自覚してるんだけど拭えないものがあって自嘲的に言ってたのに、だからこそ温もりみたいの諦めてたのに、その次の歌詞、
"周りには滑稽に見える 青臭い幸せ
瓦礫の中で強く抱きしめた
まるで初恋のように"
この歌詞で本当に幸せさが伝わってくるわけですよ。周りにはなんでそんなことで?とか思われるんですよ。でもボロボロになったぼくには、新鮮で貴重で特別で新しかったんですよ。
"少し寂しい二人"っていうのは孤独を感じていた二人同士ってことでいいですか!?
その後の情景描写や時間を共有した感じ、たまらないもう…
"あてどない革命"は自分達が明るく過ごせる見通しのない世界を目標に、"違う生き物同士の淡い夢"は若さゆえに考えるずっと一緒に楽しくいられたら、とかかな。ちなみに あてどない という言葉は、当て所無い と漢字で書いて、行く先が定まらずさまよう という意味。
"暗がりで呼吸をしてる ささやかな幸せ"のとことかこっちがはぁはぁしちゃう。そんなとこにいても幸せを感じるその時間。尊い

えっ、もうこっから先の歌詞は一つ一つ取り上げるのが野暮でしょ。めんどくさくなったわけじゃないよ。これは言わないで感じてほしいよー

そして思うんだけど、この歌詞の"きみ"と"ぼく"とは一体何なのか。誰なのか。これは明確な答えを出さないのが正解なんだよね。たとえば、"きみ"も"ぼく"も1つの個体だったらどうする?アリでしょ。幼馴染だったら?アリでしょ。もうこれはどうであっても素晴らしいんですよ!
ピノさんの作品には他にも一人称と二人称が印象的な作品があるよね。はっぴーべりーはっぴー や 東京マヌカン、このアルバムでなら前曲の すきなことだけでいいです もそんな感じ。くらげ や たりないかぼちゃ なんかでもかなり"きみ"との立ち位置を気にしていた。それぞれが繋がっているとは安直に考えないが、それぞれが様々な物語を持っていると思えるし、関係性や経緯がわからないものばかり。今挙げた たりないかぼちゃ とか m/es では似た立場だったと思っていたものの解離を感じさせる内容なんだが、この曲 きみも悪い人でよかった は似た立場の違う生き物同士が肩を寄せ合っているんだ。バッドエンドを知り、優しい終わりに胸打たれる。こういうときに本当にピノさんが好きでよかったと思えるんだ。

メロディが美しすぎて生演奏で聴きてえ。これ絶対感動するやつじゃん。もうピノさん完全にバンドとツアーしません?ピノさんがギターやろうよもう。DJライブとバンドライブは分けてさ。最後まで泣かせてくれるよなぁ。終わりのメロディ。あの大盛り上がりの演奏なんなん。本当に美しい。本当に。

MVのクオリティもすごいよね。静止画の背景を動かしてるだけなんだけどそれで心打たれるようなものが作れる。花火の映像美、天使なのか悪魔なのかわからないイラスト、犬。たまらないよ…最高。
ピノキオピー個人的No.1だった 不思議のコハナサイチ を塗り替えるか今壮絶な争いが起きてるところ。

うわああああもっとこの曲について喋りてえけど語彙が足りねえし今更歌詞を取り上げるのも!
つまり、さいきょうなんだよ。



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PinocchioP - I'm glad you're evil too / ピノキオピー - きみも悪い人でよかった - YouTube








13 SAYONARA HUMAN
"もう二度と会えない君の言葉思い出す
「人間嫌になっても、まだやめないでね。」"

シャーマンキング』という漫画にハオというキャラクターがいるんだけどね、そのハオという存在が生まれるエピソードが本編とは別に読み切りであったのよ。それを思い出した。『シャーマンキング』自体は個人的に好きじゃないし読んでないんだけど、その読み切りは読んだのね。その内容は自分が人間か疑問を持ち続けるんだが、とある霊に出会ったことで自分が何者なのかを知る、みたいな感じ。そこで印象的な台詞があって、この曲を聞いたときに思い出した。その読み切りググってみても出てこないから詳しくは覚えてないけど最後に「じゃあな、人間」って言って終わるんだよ。
~だから人間、~じゃなくても人間というフレーズは今でこそよく聞く言葉ではあるけど、そういう部分に目を向けることはあまり考えられることはなかったよなあとか思ったりもする。今とはなっては。

そういうものを雄々しく大々的に言うものの中で、この曲は難しいことをたくさん並べるわけでもなく、生きることの壮大さを謳うわけでもない。漠然と感じる不安に、君の姿を思い出してる。過去に同じ暗がりにいた存在を思い出してるのかなってなんとなく思うわけですよ。過去にね…
だからそれで思い出してる言葉に対して、"君は確かに人間だった"というのはどこか皮肉も混じってそう。勝手を押し付けてくるような行為とかをね。

それで、これは俺の勝手な妄想だからここ読まなくてもいいんだけど、この曲の一人称は"俺"、二人称は"君"。きみも悪い人でよかった の一人称は"ぼく"、二人称は"きみ"。つまり、この曲の主人公と、前曲の主人公は別人。前曲の主人公はつらい人生の中にも幸せを感じてて、この曲の主人公は押し黙ったり疑問を抱えていて、いなくなった"君"のことを思い出してる。
前曲の歌詞、
"時間は残酷で 永遠みたいな嘘で
儚い人生の一瞬にきみがいて"
時間の残酷さを憂いてる主人公。でも幸せを感じてる主人公が、
「人間ちょっとしんどいけど、人間ちょっとダサいけど、人間嫌になっても、まだやめないでね。」
って言っていたのだとしたら。
とても切なくて、残酷なんだなって思ったり、思わなかったり。
まぁ単純に人間とボーカロイドの対比かもしれないけど。

動画はまあ伸びないとは思ってたんだけどそれでも10万は行ったんだよね。すごいわ。コメントはくそばかりでほんと終わってるけど。悲しい。

ジャンルはなに?テクノ?アルバム最後がこうやって楽しく終われるのはいいよね。MVもそうだけどピノさんが機材いじってる様子や跳んでる姿が想像できる。こういう曲聴いた後の満足感たまらない。
泣いちゃう。この曲を聴くと、本当に聴いててよかっなぁって思うんだ。



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PinocchioP - SAYONARA HUMAN / ピノキオピー - YouTube








というわけでDisc 1の内容を簡単に書きました
書き始めたのが大分前で気持ちや立場も変わってて
たぶん今改めて書いたらまた違うものになるんだろうけど
それでもまあざっくり
レビューとか考察とかそういうのを放ってざっくりと書きました

扱き下ろされてもいいから語り合いたいので
気軽にコメントください
そのコメントに気づき次第返事します

いやー長かった
長かったねー

良いアルバムだからみんな!買おうね!
本当に良いアルバムだから!
違法DLしてるやつらはくたばれよ!



いやー疲れた




いやー







やー












③に続く
http://realtheukon.hateblo.jp/entry/2018/08/22/180000