うずくまる


暗い液体の中から抜け出す時を待ってたら
息苦しい気体の濃霧に落とされた
今もこうして固体に包まれて膝を抱えてる
踞っている

「子宮にいた頃を思い出して落ち着く」
誰かはそう言う
なのに肉親が憎いのだ
それならば私達は本能で護られるべき帰巣を望んでいるのだ
皮の奥の肉の更に奥を噛み締めたいとしているのだ

薄くまぶたを開くと眩い光が
熱くて眼球が焼けそうになる
暖かくて幸せに溶けそうになる
弱い皮膚に触れる金属が
冷たくて震えが止まらなくなる
安堵で涙がこぼれそうになる

最初の記憶は暗い廊下を歩いて
リビングに向かっていた幼き日
拠り所が無いのが不安だから
幼心が留守番をする

半人前になった踵を
無くなった尾を思い
無数にも見えた中を泳いできたんだ

遠くに見える明滅する光が
気になって不眠を患う
ぼんやり見つめると落ち着いてくる
そばに置いたメトロノーム
うるさくて病みそうになる
生きていることを確かめられる

使い捨てられた人生だと知っていても
棄てられない命を抱えているよ
捨てられない場所を探してるよ

耳を塞いで
視界を狭めて
光を閉ざして
体を丸くして
疼く右脳静めて
踞っているよ
私は何処にもいないよ
私は此処にいるよ